良い建物をつくる前に、良いプロジェクトをつくる②
第2回:予算の根拠となる建築計画
前回の第一回目の記事「第1回:予算の決め方を問い直す」では、建築予算を先に決め、その金額に建物を合わせていく進め方の危うさについて考えました。
まだ第1回の記事を読まれていない方は、先に第1回の記事をご覧ください。
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第1回:予算の決め方を問い直す
金融機関から示された融資可能額や、過去に建設した建物の坪単価は、予算を検討するうえで大切な参考情報です。
しかし、必要な建物の規模や内容を検討する前に予算だけを固定すると、事業の目的に対して建物が不足したり、反対に過剰な投資になったりする可能性があります。
そこでYADOでは、「予算を決めてから建築を考える」のではなく、まず初期段階の建築計画をつくり、その計画をもとに必要な予算を検討することをご提案しています。
今回は、その予算の根拠となる建築プランには、どのような役割があるのかを考えます。

代表取締役
一級建築士 山野井 康明
Contents
| 建築プランがあるから、予算の妥当性を判断できる
建築投資の予算を決めるためには、その根拠となる建築計画が必要です。
ここでいう建築計画とは、工事を行うための詳細な設計図ではありません。
経営者が建築投資を進めるかどうかを判断するための、初期段階の計画です。
| 最初に必要な建築計画とは
初期段階では、主に次の内容を整理します。
- 建築によって解決したい経営課題
- 必要な諸室やその機能
- 建物のおおよその規模
- 敷地内の配置
- 人や物、車両の動線
- 駐車場や外構の考え方
- 将来の増築可能性
- 概算工事費と総事業費
- 完成までのスケジュール
これらを一度図面や資料にすることで、経営者の頭のなかにある構想が具体的になります。
| 本当に必要な規模を確認する
建物の規模は、現在の従業員数や床面積だけでは決められません。
工場であれば、生産量、機械設備、材料や製品の保管量、搬入経路などを整理する必要があります。
事務所であれば、将来の従業員数、働き方、来客対応、会議室、収納、休憩スペースなども関係します。
必要な機能を積み上げていくと、想定していた建物が大きすぎると分かることもあれば、反対に必要な面積が不足していると分かることもあります。
建築プランは、建物を大きく見せるためではなく、事業に最適な規模を確認するために作成します。
| 新築以外の選択肢を比較する
経営課題を解決する方法は、新築だけではありません。
- 現在の建物の使い方を見直す
- レイアウトを変更する
- 部分的に改修する
- 増築する
- 中古建物を購入して改修する
- 賃貸物件へ移転する
- 複数年に分けて段階的に整備する
複数案について、費用、工期、将来性、事業への影響を比較することで、会社に適した方法を判断しやすくなります。
| 増築では既存建物の確認も必要になる
既存建物がある敷地で増築を検討する場合は、既存建物の法適合性を確認する必要があります。
増築部分だけでなく、既存建物を含めて建築基準法への適合性が問われるケースがあるためです。
建ぺい率、容積率、用途地域、接道条件なども、敷地全体で判断されます。
既存建築物が確実に確認申請を行い確認済証は交付されていますか?
施工後に完了検査を受検し、検査済証は交付されていますか?
空いている場所があるからといって、増築できるとは限りません。
初期段階で既存建物と敷地条件を確認することで、計画を途中で大きく見直すリスクを抑えられます。
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| 概算工事費は総事業費で考える
建築予算には、建物本体以外の費用も含まれます。
外構、造成、地盤改良、解体、設備、設計料、調査費、申請手数料、看板、家具、引っ越し費、予備費などです。
坪単価だけで予算を考えると、計画が進んだ後に想定外の費用が増えることがあります。
そのため、建築プランをもとに、プロジェクト全体の総事業費を整理することが重要です。
| まとめ
建築プランは、設計を始めるためだけのものではありません。
建物の規模が適切か、新築が本当に必要か、総事業費はいくらになるのかを判断するための材料です。
計画を可視化し、複数の選択肢を比較することで、予算は単なる上限額ではなく、事業目的を実現するための投資額になります。
建築予算を決める前に、まずは判断の根拠となる建築計画をつくることが大切です。