良い建物をつくる前に、良いプロジェクトをつくる
第1回:予算の決め方を問い直す
建築のご相談を受け計画をスタートさせると、比較的早い段階で「予算はどのくらいを想定していますか」という話題になります。
すると、経営者の方から次のようなお話を伺います。
- 金融機関から提示された融資可能額を参考にしている
- 以前建設した建物の坪単価をもとに考えている
- 同業他社の建築事例から金額を想定している
- 中期経営計画のなかで予算枠を決めている
どれも、予算を考えるための材料としては自然なものです。
金融機関の見解は資金計画に欠かせませんし、過去の坪単価も一定の参考になります。
ただ、その前に一度立ち止まり、考えていただきたいことがあります。

代表取締役
一級建築士 山野井 康明
〜その予算は、どのような建築計画をもとに決められたものでしょうか?〜
| 建築計画より先に予算が決まっていないか
企業の建築投資では、必要な建物の規模や内容を検討する前に、予算枠が決まっていることがあります。
しかし、以前建てた建物と今回計画する建物では、用途、規模、設備、敷地条件が異なります。
近年は資材価格や人件費も上昇しており、数年前の坪単価をそのまま現在の工事費に当てはめることも難しくなっています。
また、金融機関から示される「融資を受けられる金額」と、会社が実際に「投資するべき金額」は、必ずしも同じではありません。

重要なのは予算の金額そのものではなく
その金額を導き出した根拠です。
| 予算を先に決めると、計画が予算に引っ張られる
たとえば、必要な建物を検討する前に、建築予算を1億円と決めたとします。
実際に必要な建物が1億3,000万円規模であっても、設計では1億円に収めることが優先されます。
その結果、必要な面積や設備を削り、将来の増築余地をなくすことで、当初の事業目的を十分に実現できないことがあります。
反対に、改修や増築で課題を解決できるにもかかわらず、大きな予算枠があるために、新築を前提として計画が進むことも考えられます。
もちろん、どのプロジェクトにも予算上の制約はあります。
ただし、その予算が建築計画を検討した結果ではなく、別の基準で先に決められたものであれば、一度立ち止まる必要があります。
| 予算の前に、建築の目的を考える
建築投資で最初に整理したいのは、「いくらかけるか」ではありません。
- 建築によって何を実現したいのか
- 会社のどの課題を解決したいのか
- どの程度の建物が必要なのか
- 新築以外の選択肢はないのか
- 5年後、10年後にどのような使い方をするのか
こうした目的や条件を整理することで、必要な建築計画が見えてきます。
| まとめ
良い建物は、決められた予算のなかで図面を描くだけでは生まれません。
事業の目的を整理し、必要な建物を考え、その実現に必要な金額を確認する。
その順番によって、初めて予算に根拠が生まれます。
「予算を決めてから建築を考える」のではなく、「建築を考えてから予算を決める」。
良い建物をつくるためには、まず良いプロジェクトをつくることが必要です。