価格以外で選ばれる会社は、顧客に何を体験させているのか
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「5年後の成長を施設計画にどう織り込むか」では、現在必要な面積だけで建物を考えるのではなく、将来の人員増加や設備投資、事業の変化まで想定して施設を計画することについてお伝えしました。
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5年後の成長を施設計画にどう織り込むか
建物は、会社の成長を受け止める場所です。
しかし、施設が会社の経営に与える影響は、働く人や生産性だけではありません。
顧客がその会社をどう感じるかにも、空間は関係しています。
今回は、価格だけではなく「この会社にお願いしたい」と思ってもらうために、顧客体験と空間の関係について考えます。

代表取締役
一級建築士 山野井 康明
Contents
| 商品やサービスだけで会社は選ばれていない
同じような商品やサービスを扱う会社が複数あれば、価格は比較しやすい判断材料になります。
しかし、実際の購買行動は価格だけでは決まりません。
- 問い合わせたときの対応
- 店舗や会社へ入りやすいか
- 説明が分かりやすいか
- 待っている時間を快適に過ごせるか
- 清潔に管理されているか
- スタッフの働く様子
- 安心して相談できる雰囲気
こうした一連の経験も含めて、顧客は会社を評価しています。
商品そのものに大きな違いがなくても、
「またここに頼みたい」
と感じてもらえれば、価格だけで比較されにくい関係をつくることができます。
| 自動車整備工場の例
自動車整備工場を例に考えてみます。
顧客が求めているのは、車をきちんと整備してもらうことです。
しかし、一般の顧客が整備技術の違いを正確に判断することは簡単ではありません。
そこで、顧客は別の情報から会社を判断します。
駐車場へ入りやすい。
受付が分かりやすい。
工場が整理されている。
スタッフが作業内容を丁寧に説明してくれる。
待っている場所が快適である。
整備している様子を見ることができる。
こうした体験から、
「きちんと仕事をしてくれそうだ」
「安心して任せられそうだ」
という印象が生まれます。
これは自動車整備工場に限った話ではありません。
| 見えない価値ほど、空間が伝える
専門的なサービスを提供する企業ほど、顧客には品質の違いが分かりにくいことがあります。
例えば、
- 製造業
- 医療・福祉
- 士業やコンサルティング
- 美容
- 飲食
- 宿泊
- 建築・不動産
- BtoBの技術サービス
なども同様です。
契約する前に、技術力やサービス品質を完全に確認することはできません。
だからこそ顧客は、目に見えるものから、目に見えない品質を推測します。
会社が整理されている。
道具や製品が丁寧に扱われている。
スタッフが働きやすそうに見える。
受付や打合せ場所がきちんと整えられている。
こうした空間から受け取る情報が、会社への信頼につながることがあります。
空間は、目に見えない仕事の質を伝える手段にもなります。
| 顧客が会社と接する順番を考える
顧客体験を考えるとき、内装のデザインから始める必要はありません。
まずは、顧客が会社とどのような順番で接するかを整理します。
例えば、
ホームページを見る
↓
問い合わせる
↓
会社や店舗を訪れる
↓
駐車する
↓
入口を探す
↓
受付する
↓
説明を受ける
↓
商品やサービスを利用する
↓
会計する
↓
帰る
という流れがあります。
この一つひとつに、「分かりにくい」「待たされる」「不安になる」といった小さなストレスが隠れているかもしれません。
逆に、そのストレスを一つずつ減らすことができれば、顧客が感じる会社の印象は変わります。
| 豪華にすることが顧客体験ではない
顧客体験を良くするというと、受付を豪華にしたり、内装をおしゃれにしたりすることを想像するかもしれません。
しかし、重要なのは高級感だけではありません。
例えば、顧客が求めているのが「安心」であれば、作業内容が見えることの方が重要かもしれません。
「相談しやすさ」であれば、落ち着いて話せる場所が必要かもしれません。
「スピード」で選ばれている会社なら、受付からサービス提供までの動線を短くすることの方が価値があります。
必要な空間は、会社が顧客に何を提供したいかによって変わります。
| 売上を上げるために、すぐ建築する必要はない
顧客体験を改善するために、必ずしも建て替えや大規模改修が必要なわけではありません。
- 案内サインを分かりやすくする
- 受付位置を変更する
- 待合スペースの使い方を見直す
- 商品や技術を見せる場所をつくる
- 顧客とスタッフの動線を整理する
- 打合せ場所を改善する
こうした小さな変更でも、顧客の感じ方が変わる場合があります。
まず顧客がどこで不安や不便を感じているのかを確認し、それが運用で改善できるのか、空間を変える必要があるのかを整理することが大切です。
| YADOが顧客体験から空間を考える理由
YADOでは、店舗や社屋を計画するとき、「どのようなデザインにしたいですか」だけを聞くのではなく、
顧客にどのような会社だと感じてもらいたいですか
というところから考えます。
誰が訪れるのか。
何を不安に感じるのか。
どこで会社の強みを感じてもらえるのか。
どのような体験が「また利用したい」につながるのか。
その流れを整理したうえで、必要な空間を考えます。
建築そのものが売上を生み出すわけではありません。
しかし、商品やサービスの価値を顧客へ正しく伝え、その価値を感じてもらいやすい環境をつくることはできます。
| まとめ
価格競争から抜け出すために、ただ価格を上げればよいわけではありません。
顧客が、
「安心して任せられる」
「ここなら相談しやすい」
「また利用したい」
と感じる理由をつくる必要があります。
その理由は、商品やサービスだけでなく、会社と接する一連の体験のなかにもあります。
価格ではなく価値で選ばれるために、
顧客が会社をどう体験しているかを考える。
その中で空間に改善できることがあれば、建築やデザインを使う。
YADOは、建物をきれいにすることを目的にするのではなく、企業が持っている価値を顧客へ伝えるために、空間に何ができるのかを考えます。
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