2026.08.13

5年後の成長を施設計画にどう織り込むか

前回の記事
「建築計画が決まる前に設計者へ相談できること」では、土地や予算、建物の規模が決まってから設計者へ相談するのではなく、事業構想や投資判断の段階から相談することで、選択肢を広く持てることをお伝えしました。

前回の記事を読まれていない方は、先に前回の記事をご覧ください。

前回の記事は
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建築計画が決まる前に設計者へ相談できること

では、実際に施設計画を始めるとき、どの時点の会社を基準に建物を考えるべきでしょうか。
現在の従業員数や生産量だけを見て計画すると、数年後には手狭になるかもしれません。

一方で、将来の成長を見込みすぎれば、使われない空間を抱えることになります。

今回は、5年後の会社の姿を施設計画にどう織り込むかを考えます。

 株式会社YADO一級建築士事務所
 代表取締役
 一級建築士 山野井 康明

| 「今必要な広さ」だけで計画しない

施設計画では、現在の状況から必要面積を算出することが基本になります。
・現在30人で働いているのであれば、30人が働ける事務所を考える。
・現在の生産量に必要な設備が10台であれば、10台を配置できる工場を考える。

もちろん、この考え方は間違いではありません。

しかし、建物は完成した翌年だけ使うものではありません。
5年後、10年後も使用することを考えると、現在の状態だけを基準にした計画には注意が必要です。

例えば、数年後に社員が40人へ増えたとき、席を増やせない。
・新しい設備を導入したいが、搬入する場所がない。
・生産量が増えたが、製品を保管するスペースがない。

そのような状況になれば、完成して間もない建物に追加工事が必要になる可能性があります。

| 将来を正確に予測する必要はない

「5年後のことなど分からない」と感じる経営者も多いと思います。

その通りです。

売上、社員数、顧客、設備、事業内容が5年後にどうなっているのかを正確に予測することはできません。
そこで重要になるのは、未来を一つに決めることではなく、いくつかの可能性を想定することです。

例えば、社員数について、

という複数のケースを考えます。
工場であれば、生産量や設備台数についても同じように考えられます。

一つの未来を当てにいくのではなく、いくつかの将来像に対して施設がどの程度対応できるかを確認します。

| 面積を余らせることだけが将来対応ではない

将来の成長に備えるというと、最初から大きな建物をつくることを想像するかもしれません。
しかし、使わない面積をつくれば、その分だけ建築費や維持管理費も増えます。

重要なのは、余分な面積を持つことではなく、変化しやすい建物にしておくことです。

例えば、事務所であれば、

といった方法があります。

工場であれば、

といった考え方ができます。

将来対応とは、「今つくっておくこと」だけではありません。
将来つくりやすい状態を残すことも立派な施設計画です。

事業が成長すると、建物だけでなく敷地の使い方も変わります。
・社員が増えれば駐車場が必要になります。
・生産量が増えれば、トラックの出入りや製品保管スペースも増えるかもしれません。

建物を増築できても、駐車場や車両動線を確保できなければ、敷地全体として使いにくくなります。

そのため初期計画では、建物を配置すると同時に、

まで考えておくことが重要です。

現在の建物がきれいに収まる配置ではなく、将来の変化を受け止められる配置を考えます。

| 「一度に完成させない」という選択肢

事業の成長が見込まれていても、将来必要になるものをすべて最初からつくる必要はありません。

そこで検討したいのが、段階的な施設整備です。

例えば、
将来3,000㎡程度の工場が必要になる可能性があったとしても、現在必要なのが2,000㎡であれば、まず2,000㎡を建築し、残り1,000㎡を増築できる計画としておく方法があります。

事務所でも同様です。
将来50人になる可能性があるからといって、現在30人の会社が最初から50人分の執務スペースを整備する必要はありません。

成長に合わせて用途変更できる場所をつくったり、増築できる位置を確保したりすることで、初期投資を抑えながら将来に備えることができます。

一度に完成させる計画ではなく、会社と一緒に成長できる施設として考えることが大切です。

| 成長だけでなく、縮小や変化にも備える

将来計画というと、事業が拡大することだけを考えがちです。

しかし、経営環境によっては、事業内容を変更したり、拠点を統合したりする可能性もあります。

そのため、施設計画には、

という視点も必要です。

成長に対応できることと同時に、経営の変化にも対応できる柔軟性を持たせることで、建築投資のリスクを抑えることができます。

| 5年後の数字を建築条件に置き換える

中期経営計画に「5年後売上○億円」「社員数○人」「生産能力○%増」と書かれていても、それだけでは建築計画にはなりません。

その数字を、施設に必要な条件へ置き換える必要があります。

例えば、
社員30人から45人へ
→ 執務席、更衣室、駐車場はどう変わるか。

生産量が1.5倍へ
→ 設備台数、材料置場、製品保管、搬入出はどう変わるか。

新規事業を開始する
→ 新しい作業場所や顧客対応スペースが必要か。

このように、経営計画と施設計画をつなぐことで、初めて建物が会社の成長戦略の一部になります。

| YADOが考える施設計画

YADOでは、現在必要な部屋や面積だけを伺って建築プランをつくるのではなく、今後の事業計画についても確認します。

これらをもとに、現在必要な施設と、将来必要になる可能性がある施設を分けて考えます。

「今つくるもの」

「将来つくれるようにしておくもの」

この二つを整理することで、過剰投資を抑えながら、事業成長を妨げない施設計画を目指します。

| まとめ

5年後の会社を正確に予測することはできません。

だからこそ、一つの未来を前提に大きな建物をつくるのではなく、複数の可能性に対応できる計画を考えることが重要です。

大切なのは、未来のために大きな建物をつくることではありません。

現在の会社に合わせて完成させるのではなく、会社とともに変化できる施設を計画する。

自身の事業が今後どう展開していくのか。どう展開させていきたいのか。
今の事業拡大が将来の更なるステップアップになることを想像していかなければ、その時点で現状維持(=衰退)になります。

将来の事業拡大を見据えた、建築投資をYADOとともに目指しましょう。


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