工場・事務所のリノベーション費用は何で決まる?改修費を左右する7つのポイント
工場や事務所のリノベーションを検討するとき、経営者として最初に気になるのは、
「いくらくらいかかるのか」
ではないでしょうか。
新築とリノベーションのどちらが適しているかについては、前回の記事で詳しく解説しています
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新築かリノベーションか?工場・事務所など企業施設の判断基準
インターネットで検索すると、「坪○万円」「1㎡あたり○万円」といった相場も見つかります。
しかし、企業施設のリノベーションでは、面積だけで費用を判断することは難しいのが実情です。
同じ1,000㎡の工場でも、内装だけを改修する場合と、屋根・外壁・空調・電気設備まで更新する場合では、必要な費用は大きく変わります。
今回は、工場や事務所のリノベーション費用が何によって決まるのか、建築計画の初期段階で確認したいポイントを整理します。

代表取締役
一級建築士 山野井 康明
Contents
| そもそも「リノベーション費用」には何が含まれる?
企業施設のリノベーションといっても、その内容はさまざまです。
内装の変更だけの場合もあれば、
- 間取りや作業動線の変更
- 屋根・外壁の改修
- 空調や換気設備の更新
- 電気設備の増強
- トイレや給排水設備の更新
- 耐震補強
- 断熱・省エネ改修
- 増築
まで含む場合があります。
国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」でも、改装・改修工事には内装の模様替え、間取り変更、設備機器の更新など幅広い工事が含まれています。
そのため、「リノベーションの坪単価」だけを聞いても、実際の予算を判断する材料としては十分ではありません。
1.どこまで工事するか
最も費用に影響するのは、当然ながら工事範囲です。
例えば事務所で、
床・壁・天井をきれいにするだけなのか。
間仕切りを変更するのか。
空調や照明まで交換するのか。
トイレや給湯室まで改修するのか。
によって費用は変わります。
工場ではさらに、
生産設備の配置変更、電気容量の増強、換気、排気、給排水、床の補修など、事業特有の工事が加わります。
まずは、
「何を新しくしたいか」ではなく、「現在どんな問題を解決したいのか」
を整理することが大切です。
2.既存建物の状態
リノベーションでは、新築にはない大きな要素があります。
それが現在の建物の状態です。
築年数だけでは判断できません。
同じ築30年でも、適切に維持管理されてきた建物と、長期間ほとんど修繕されていない建物では状態が大きく違います。
確認したいのは、
構造体、屋根、外壁、防水、建具、給排水、空調、電気設備などです。
見た目はまだ使えそうでも、設備更新の時期が重なっていれば、改修費が想定以上になることがあります。
そのため、リノベーションでは設計を始める前の現況調査が非常に重要です。
3.設備をどこまで更新するか
企業施設では、建物本体より設備工事の割合が大きくなることがあります。
特に工場では、
電気容量、空調、換気、コンプレッサー、給排水、生産設備などが事業内容と直結しています。
例えば、新しい機械を導入したいだけなのに、既存の受変電設備では容量が不足している。
その結果、建物内部だけでなく電気設備全体の更新が必要になることもあります。
事務所でも、社員数の増加や働き方の変化によって、空調、電源、通信設備などを見直す必要があります。
リノベーション費用を考えるときは、内装費だけではなく、設備更新費まで含めて考えることが必要です。
4.法規や既存建物の資料が揃っているか
古い建物では、
「確認申請の図面がない」
「検査済証が見つからない」
というケースもあります。
増築や用途変更、大規模な改修を行う場合には、現在の建物がどのような状態で建てられているのかを確認する必要があります。
資料が不足していれば、現地調査や既存建物の復元図作成などが必要になる場合もあります。
仮に既存図面が残っているケースでも、データ化されていない場合は製本されている既存図面をデータ化することから始めなければなりません。
また、改修工事ではアスベストへの対応も重要です。現在、建築物の解体・改修工事では石綿含有建材の使用状況について事前調査が必要とされており、一定の調査は資格要件を満たす者が行う必要があります。
こうした工事を始める前に必要となる調査費用も、リノベーションでは考えておかなければなりません。
5.会社を使いながら工事するか
企業施設ならではの大きなポイントです。
住宅とは違い、
「工事期間中も会社を止められない」
というケースが多くあります。
工場なら生産を続けたい。
店舗なら営業を続けたい。
事務所なら社員が働きながら改修したい。
この場合、工事を何期かに分けたり、仮設通路や仮事務所を設けたりする必要があります。
一度に空っぽの状態で工事するより、工事費や工期が増える可能性があります。
そのため、リノベーションでは、
工事そのものの費用+工事中の事業への影響
まで考える必要があります。
6.どこまで性能を上げるか
せっかく改修するのであれば、
断熱性能を高めたい。
空調効率を改善したい。
照明をLED化したい。
耐震性を確認したい。
職場環境を改善したい。
といった要望も出てきます。
ここでは「最低限直す」のか、「この先10年、20年使うために性能まで更新する」のかによって投資額が変わります。
工事費を抑えるために必要最低限の修繕だけを行っても、数年後に再び別の設備更新が必要になれば、結果的に割高になる可能性があります。
7.壊してみないと分からない部分がある
リノベーションには、新築にはない不確定要素があります。
天井を開けたら配管が想定と違った。
壁を撤去したら構造補強が必要だった。
床を剥がしたら劣化が見つかった。
図面と実際の建物が違っていた。
こうしたことは、事前調査によって減らすことはできますが、完全になくすことはできません。
そのため企業施設のリノベーションでは、計画段階から一定の予備費を考えておくことも重要です。
| 「坪単価」より、まず工事内容を整理する
「この工場をリノベーションすると坪いくらですか?」
という質問に、建物を見ずに正確に答えることはできません。
重要なのは、
面積 × 坪単価
から予算を決めることではなく、
既存建物の調査
↓
事業上の課題を整理
↓
残す部分と変える部分を決める
↓
設備・法規・工事方法を確認
↓
概算事業費を出す
という順番です。
このプロセスを踏むことで、初めて新築との比較も可能になります。
| リノベーションは「安くする」だけの選択肢ではない
リノベーションのメリットとして、建築費を抑えられる可能性がよく挙げられます。
しかし、それだけが価値ではありません。
今の立地を維持できる。
既存建物の使える部分を生かせる。
会社の歴史を残せる。
段階的に投資できる。
場合によっては事業を続けながら施設を更新できる。
こうしたメリットもあります。
一方で、既存建物による制約が大きければ、新築の方が合理的なこともあります。
重要なのは、
リノベーションを安い新築として考えないことです。
今ある建物をどこまで活用し、どこへ新しく投資するのか。
その組み合わせを考えることが、企業施設のリノベーションでは重要になります。
まとめ|まず「いくら?」の前に建物を調べる
工場や事務所のリノベーション費用は、面積だけでは決まりません。
建物の状態、改修範囲、設備、法規、工事中の事業継続、求める性能など、多くの条件によって変わります。
だからこそ、最初から坪単価で予算を固定するのではなく、
現在の建物を調査し、何を残し、何を変えるのかを整理してから予算を考える。
この順番が非常に重要となります。
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YADOでは、既存建物を調査したうえで、新築、改修、増築など複数の方法を比較しながら、企業にとって適切な施設投資を考えます。
「この建物はまだ使えるのか」
「改修するとどの程度の工事が必要なのか」
リノベーションを何となく安価そうだし、綺麗になるだろうというだけで考えず、
現状の課題を整理することで、建て替えるべきか、リノベーションするべきかを判断する材料をつくることができます。