忙しいのに利益が残らない会社と、職場動線の関係
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「土地を購入する前に整理すべきこと」では、土地の価格や広さだけで判断するのではなく、必要な建物、駐車場、車両動線、将来の増築などを含めて検討することの重要性をお伝えしました。
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土地を購入する前に整理するべきこと
土地や建物は、事業を行うための単なる器ではありません。
そこで人や物がどのように動くかによって、日々の生産性や働きやすさにも大きな違いが生まれます。
今回は、仕事は忙しいのに思うように利益が残らない会社と、職場の動線との関係について考えます。

代表取締役
一級建築士 山野井 康明
Contents
| 忙しさと生産性は同じではない
社員が一日中動き回り、残業も多く、現場には常に仕事がある。
その様子だけを見ると、会社は高い生産性で稼働しているように見えるかもしれません。
しかし、忙しく働いていることと、利益を生み出していることは同じではありません。
仕事のなかには、顧客へ提供する価値に直接つながる作業と、その作業を進めるために必要な準備や移動があります。
例えば、次のような時間です。
- 必要な道具や書類を探す
- 材料を別の場所まで取りに行く
- 空いている作業場所を探す
- 前工程の完了を待つ
- 人や車両が通り過ぎるのを待つ
- 部署間を移動して確認する
- 一度運んだ物を別の場所へ移し直す
一つひとつは数分でも、社員全員が毎日繰り返せば、大きな時間になります。
仕事量は多いのに利益が残らない場合、こうした「売上になりにくい忙しさ」が職場に蓄積している可能性があります。
| 人が歩く距離にも人件費がかかっている
職場内の移動は、会計上「移動費」として表示されるわけではありません。
しかし、社員が移動している時間にも人件費は発生しています。
例えば、必要な備品を取るために往復5分かかり、それを1日に数回繰り返しているとします。
一人では小さな時間でも、複数の社員が年間を通じて繰り返せば、相当な時間になります。
さらに、移動によって作業が中断されれば、元の仕事へ集中し直す時間も必要です。
問題は、社員の歩く速度ではありません。
必要な場所と場所の関係が、業務の流れに合っているかどうかです。
- よく使う物が作業場所から遠い
- 関係の深い部署が離れている
- 入荷と出荷の動線が交差している
- 来客動線と社員動線が重なっている
- 作業の順番と設備の配置が一致していない
このような状態では、社員が努力して動くほど、職場全体が忙しく見えるようになります。
| 工場では「物の流れ」が利益を左右する
工場では、材料の入荷から加工、組立、検査、保管、出荷まで、物が一定の順番で移動します。
ところが、建物の増築や設備の追加を繰り返すうちに、作業工程と配置が合わなくなることがあります。
材料を一度建物の奥へ運び、加工後に入口付近へ戻す。
検査を終えた製品を、一時保管のため別棟へ運ぶ。
人とフォークリフトが同じ通路を使い、通過するたびに作業を止める。
こうした動きは、工場が稼働している限り毎日発生します。
移動距離だけでなく、運搬、待機、積み替え、接触事故への注意なども必要になり、生産に直接使える時間が減っていきます。
新しい設備を導入して加工速度を高めても、その前後の搬送や保管が滞れば、工場全体の生産性は上がりません。
設備単体ではなく、工程全体の流れを見ることが大切です。
| 事務所にも動線の問題がある
動線の問題は、工場だけのものではありません。
事務所でも、配置によって業務効率や意思決定の速さが変わります。
例えば、頻繁に連携する部署が離れていると、簡単な確認にも移動や連絡が必要になります。
会議室が不足していれば、打合せ場所を探したり、別の予定が終わるのを待ったりすることになります。
資料や備品の保管場所が分散していれば、社員ごとに探す時間が発生します。
一方で、すべての社員を一つの広い空間に集めれば解決するとも限りません。
会話や電話の音によって集中しにくくなり、作業効率が下がることもあります。
必要なのは、単に距離を短くすることではありません。
相談が多い仕事、集中が必要な仕事、来客対応、オンライン会議など、それぞれの業務に適した関係をつくることです。
| 建物だけが原因とは限らない
利益が残らない原因を、すべて職場の配置で説明することはできません。
価格設定、原価管理、営業方法、人員配置、設備の性能、業務ルールなど、さまざまな要因があります。
また、空間を変えなくても、次のような改善で効果が出る場合があります。
- 物の保管場所を決める
- 不要な在庫や書類を整理する
- 作業手順を見直す
- 情報共有の方法を統一する
- 使用頻度に応じて道具の配置を変える
- 部門間の役割分担を整理する
重要なのは、最初から改修や建て替えを答えにしないことです。
運用の問題なのか、配置の問題なのか、建物そのものの限界なのかを分けて考える必要があります。
| 職場動線を見直すための第一歩
動線を改善するには、図面を見るだけでなく、実際の業務を観察します。
誰が、どこからどこへ、何のために移動しているのか。
どこで作業が止まり、何を待っているのか。
何度も往復している場所はないか。
物が一時的に置かれ、通路や作業場所を狭くしていないか。
現在の動きを図面上に記録すると、移動の重なりや遠回りが見えるようになります。
そのうえで、次の順番で検討します。
- 運用方法の変更で改善できないか
- 家具や設備の配置変更で改善できないか
- 部分改修が必要か
- 増築や建て替えを検討する必要があるか
小さな改善で解決できる課題に、大きな建築投資を行う必要はありません。
反対に、建物の構造や面積が業務に合っていない場合、運用改善だけでは限界があります。
| YADOが動線の上流から考える理由
YADOでは、建物の要望を伺うだけでなく、現在の業務がどのように行われているかを確認します。
社員、材料、商品、車両、情報がどのように移動しているかを整理し、現在の職場に生じている負担を見つけます。
その結果、レイアウト変更で対応できることもあれば、改修、増築、新築が必要になることもあります。
目的は、きれいな職場をつくることだけではありません。
社員の移動や待ち時間を減らし、本来の仕事へ使える時間を増やすことです。
建築投資を行う場合も、単に面積を広げるのではなく、業務の流れに合った配置を考える必要があります。
| まとめ
忙しいのに利益が残らないとき、社員の努力が足りないとは限りません。
職場のなかに、移動、待機、探索、運び直しといった見えにくい負担が積み重なっている可能性があります。
- 人や物が必要以上に移動していないか
- 作業の順番と設備配置が合っているか
- 部署間の関係が空間に反映されているか
- 運用改善で解決できるか
- 建物そのものに限界があるか
こうした点を整理することで、本当に改善すべき場所が見えてきます。
職場を広くする前に、仕事の流れを見直す。
空間を整える目的は、社員をさらに忙しく働かせることではありません。
同じ時間と人数でも、より価値のある仕事へ集中できる環境をつくることです。
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